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『精神科医が狂気をつくる』を読んだ本に追加
精神科医が狂気をつくる―臨床現場からの緊急警告
最近、心療内科の精神科医がイライラしていてどうしたものか別のクリニックに変えるべきかと悩んでいたからというのが読んだ理由です。
著者の岩波明氏を精神科医の代表として受け取めるならば、精神科医に向けて言ってはならない禁区を連発し、彼を苛立たせてしまったのだと理解しました。
漠然と、心療内科の精神科医は心理学の延長線上にあるような感覚でいたのが大きな間違いだった。そもそも根本的に精神科医は心理学部心理学科卒ではなく、医学部の精神科なんかを卒業しているのだった。
だから、精神科医は心理学的なアプローチを嫌っている。カウンセラーによるカウンセリング(精神療法)に対しても聴くだけ聴いてカウンセラー自身はたいして有益なアドバイスも出来ないという趣旨の事が書かれていた。だから認知行動療法だってお金と時間の無駄ということらしい。
本の内容を要約すると『健康食品も運動療法も生活習慣改善も代替医療も食事療法もカウンセリングも漢方薬も脳トレも本物の精神疾患にはたいして効果ないです。』ということになる。でもって、肝心の精神医学に基づく根本的な向精神薬でさえ薬の摂取で精神病が治るとは限らない事例まで挙げられている。つまり、精神病は脳の病気ということは断定できるけど、どのようにして向精神薬が効いていくのかというプロセスも分からない、だけども結果的に向精神薬を飲んだ患者は快方に向かっていくということしか現時点では分かっていないということだったんだ。
そう、鬱病や統合失調症、不眠症に関する本には向精神薬が脳の受容体に作用し神経伝達物質の働きにアプローチをする云々とあるけれども、薬の作用の詳細は断定的ではなく、「と考えられています。」と曖昧な表現になっている。SSRIも効果が認められるまで最低約2週間のタイムラグが生じるわけで、その理由は明らかにされていない。
精神医学はまだまだ21世紀初頭の医学や科学では未知の領域で分からないことだらけなんだ。そして、著者はそんな分かんない事だらけの脳の構造機能について如何にも分かったように語る脳科学者に対して”自称”と前振りつけて憤っている。確かにその通りなんだ。脳科学者っていうのは、精神疾患についてはほとんど全く語ることをしない。脳専門の研究者が精神科医であるのに”自称”脳科学者は精神科医ではないのだから。
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